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ハンバーガーショップ

ハンバーガーショップ

信じられないとおっしゃる方もいますが、私はものすごく気が小さくて照れ屋な男です。
講演会で堂々と喋ることができるのは、自己催眠をかけているのと、「伝えたい」という強い意志が働いているからです。

 

それが証拠に、講演会の前、控え室などでお茶を出されて雑談することがありますが、そんな時の私は、とてもオドオドしていますし、「自己紹介して下さい」などと言われると、顔を真っ赤にして意味不明なことを口走ったりします。

 

さて、そんな私ですが、時々相談室を出て、散歩がてら、おやつを買いに、歩いて10分ぐらいのマグドナルドまで出掛けることがあります。今、ハンバーガーは、平日65円です。
安い! (平成13年5月頃?)

 

店のドアを開けると、いっせいに可愛らしい女の子が「いらっしゃいませ」と声をかけてきます。その瞬間、いつも恥ずかしい気持ちでいっぱいになります。ドアから注文する場所・カウンターまでの、たかだか数歩がかなり長く感じることもあります。

 

下を向いて小声で、「ハンバーガーをひとつ下さい」と言うと、彼女らは「ハンバーガーをおひとつ。お飲み物はいかがですか?」なんてことを言ってきます。ここで、恥ずかしさは頂点に達し、顔をこわばらせ、やや怒った声で「いえ、いりません」と言ったりします。

 

注文したハンバーガーができあがるまで、とても時間が長く感じられ、「こんな安いハンバーガーをひとつだけだと、店員から『なんてせこい奴なんだろう』と思われているのではないかな」と、妄想したりします。

 

でも私は、恥ずかしさのあまりハンバーガーを買えなかったということは1度もありませんし、「あなたってせこいわね」と言われたことも1度もありません。

 

相談室に戻ってきて、コーヒーを飲みながらハンバーガーを食べると、とても幸せな気持ちになります。「俺って偉いなあ。今日も恥ずかしかったけど、ちゃんと買えたなあ」と、本気で思います。

 

 

この話は、大変くだらない話ですが、ここにはいくつかの教訓があります。

 

 

ひとつめ…。
私が、店に入る度に恥ずかしい気持ちになっているということを悩み始めたら、かなり情けない気持ちになり、際限なく悩むだろうということ。私は照れ屋で小心者ですが、そのことで特別悩んだりはしていません。
自分でも顔が赤くなっているのがわかることがありますが、ハンバーガーを買うという目的を達成できたのだから、「それで、よし!」と考えています。

 

こういう考え方を、森田療法では、「あるがまま・目的本意」の考え方といいます。
森田療法では、「人前で話す時、ドキドキするのですが…」というクライエントの訴えに対し、「あるがまま、ドキドキしながら話せばいいではないですか。あなたの目的は、人に話を伝えることなんだから」と言います。
私は、恥ずかしいというあるがままの気持ちを持って、目的であるハンバーガーを買うことが見事できたのです。次回も私は、ドキドキしながら、ハンバーガーを買うと思います。

 

 

ふたつめ…。
悩む人は、よく想像の世界で時間をつぶしています。
店員は、私のことを「せこい奴だと思っているのではないか」と本気で思い始めたら、それこそいくらでも悩むことができます。私は、店内では、そういう感情が一瞬頭をよぎりますが、店を出たら忘れてしまいます。
大体、店員の気持ちなど確かめることなどできません。
万が一、「ねえ、ひょっとして、私のこと、せこいおっさんだと思ってない?」と確かめたところで、本当のことを言ってくれるとは限らないし、本当のことを言ってくれたとしても、それを信じられるかどうか、という私自身の問題も残ってきます。

 

悩まないためには、事実だけをとらえるという姿勢が大切です。
事実は、「ありがとうございました」と言ってニッコリ笑顔を見せたということです。

 

 

みっつめ…。
こんなくだらないこと、ハンバーガーを買えたという誰にでもできることをやったくらいで、自分を褒めたということ。ハンバーガーを買うのにドキドキする自分を、ダメな人間だとは思っていないということ。

 

私のやったことは、誰にでもできることではありますが、自分には苦手なことです。
ですから、今日も私は、ハンバーガーを買えた自分を褒めます。
自分で自分を褒めたからといって、誰に迷惑がかかるでしょう?
誰にも迷惑なんてかかりません。遠慮することなく、大いに自分を褒めたいものです。(ただし、口に出して言ってはダメ、周りの人からあきられてしまうから…。) 

 

男、40、竹内成彦。
もう社会的にはりっぱな大人なんだから、自分のことは自分で褒めなくては…、と思います。
よく、いい年こいて、人に誉められようと躍起になって、自慢話を延々とされる方がいらっしゃる方がいますが、あれは、ハッキリ言って見苦しいです。大人になったら、自分のことは自分で褒めたいものです。 

 

以上、ハンバーガーショップのお話でした。

 

 

心の金曜日


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